エピローグ 伊織の本音

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エピローグ 伊織の本音

 それから数日が経ち、唯は起きていられるようになった。自室で、伊織をお姫様抱っこしていた。 「よほど寂しかったんですね」  伊織はクスッと笑った。 「素直に言うわけにいかないだろ?」  唯は苦笑しながら言った。 「そうかもしれませんね。あの」 「どうした?」 「今まで、たった独りで、苦しかったですよね。辛かったですよね。涙なんて零さずに、ずっと生きてきたんですよね?」 「……ああ」  しばしの沈黙ののち、低い声で唯が言った。 「もう、泣いていいんですよ……?」  伊織は唯の頬にそっと触れて、とても優しい声で言った。 「オレは……」  唯の頬を一筋の涙が頬を伝った。 「辛いに決まっているんです。あなたは、なんでもかんでも、抱え込みすぎたんです。もう、無理しなくていいんですよ」  親指でそっと涙を拭いながら、伊織が言った。  唯は涙していることを隠すかのように、ぎゅっと抱きしめた。 「あなたはもう、独りじゃ、ありません」  伊織の声を聞きながら、唯は思った。  ――伊織になら、話してもいいかもしれない。いつか、話してみよう。オレの、すべてを。  唯は内から湧き上がる哀しみに身を任せつつ、抱きしめることしかできなかった。
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