7人が本棚に入れています
本棚に追加
エピローグ 伊織の本音
それから数日が経ち、唯は起きていられるようになった。自室で、伊織をお姫様抱っこしていた。
「よほど寂しかったんですね」
伊織はクスッと笑った。
「素直に言うわけにいかないだろ?」
唯は苦笑しながら言った。
「そうかもしれませんね。あの」
「どうした?」
「今まで、たった独りで、苦しかったですよね。辛かったですよね。涙なんて零さずに、ずっと生きてきたんですよね?」
「……ああ」
しばしの沈黙ののち、低い声で唯が言った。
「もう、泣いていいんですよ……?」
伊織は唯の頬にそっと触れて、とても優しい声で言った。
「オレは……」
唯の頬を一筋の涙が頬を伝った。
「辛いに決まっているんです。あなたは、なんでもかんでも、抱え込みすぎたんです。もう、無理しなくていいんですよ」
親指でそっと涙を拭いながら、伊織が言った。
唯は涙していることを隠すかのように、ぎゅっと抱きしめた。
「あなたはもう、独りじゃ、ありません」
伊織の声を聞きながら、唯は思った。
――伊織になら、話してもいいかもしれない。いつか、話してみよう。オレの、すべてを。
唯は内から湧き上がる哀しみに身を任せつつ、抱きしめることしかできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!