第一章 唯の正体

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「守ります。言うような相手もいませんので」  伊織も真っ直ぐに見つめ返した。 「……分かった。オレは、人間じゃない。だから、こんなふうに目の色を変えられる」  唯は言いながら、目を閉じて開けると、目が黒になっていた。再び目を閉じて開けると銀色に戻っていた。 「そうなんですね」 「驚いていると思うが、警戒していなさそうだな?」  マグカップを持ち上げて、珈琲を飲みながら、尋ねた。 「命を救ってもらったんですよ? 警戒してどうするんですか。驚いているのは認めますが」  伊織は珈琲を飲みながら、苦笑した。 「どうして、あの場所にいた?」 「通りかかっただけですよ。……居場所を、探していたんです」 「居場所ねぇ……」  ふうんと言いながら、唯は視線を伊織に投げた。 「誰にも邪魔されない場所が、欲しかったんです。僕にはお金がないから、ああやって街を彷徨(さまよ)うしかなかったんです」 「そうか。お前がよければ、だが。ここの空き部屋、好きに使っていいぞ」 「なんで、そこまでしてくれるんですか? 人間ではないことまで告げるなんて。賭けに近いでしょう?」  伊織は疑問を口にした。 「そう思うのが普通だよな。だが、お前はオレを軽蔑しない。少なくとも、オレが見てきた人間達とは違う。人間でないと分かるや、殺そうと襲い掛かってくる連中とは、な」 「……」  伊織は目を見開いたまま、固まってしまった。 「オレはそういう人間から、距離を取った。というか、逃げるしかなかった、の方が正しいな。詳しい話はまたの機会に。……それで、答えは出たか?」  その声で現実に引き戻された伊織はハッとした。 「はい。これから、よろしくお願いします」  ぺこりと頭を下げると、唯がふっと笑った。
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