静かな龍

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哎呀(アイヤー)真是个好人(なんて素敵な人)…♡」 思わず口から溢れ出た中国語。 物陰からこうして見つめてるだけでも昇天しそう…。ううん、もう昇天してるわ、すでに私はイッちゃってるのよ、ああっ、こうしちゃいられない、早く“彼”を写真に収めないと!! そう思ってスマホを構えたその時だった。 「梅麗(メイリー)さま。盗撮はやめた方がいいですよ、シンプルに糞キモいですから。」 後ろから耳元で囁かれて、私の体が飛び上がった。 ちょっ、 「静龍(ヂィンロン)!!邪魔しないでよ!!」 そこにいたのは、スラッと背の高い男子高校生。学ランに身を包むこの男は、事も無げに平然とこっちを見下ろしていた。 冷ややかな雰囲気の切れ長の目に、泣きボクロ、黒髪のマッシュヘアが特徴的で、いくつもついているシルバーピアスが妖しく揺れて輝いている。 顔は良い。 良いどころか、破格に良い。 そこは認める。 けどね!? 「いや、だって盗撮って犯罪ですよ、キモい上に犯罪ですよ、キッモ。 あーあ、キッッッッッッッモぉ。」 性格が全然良くない!! 言いたいことバンバン言ってくる!! なによ、最後のダメ押しの「キッッッッッッモ」っているの!? 私はギンッと睨みつけた。 「何度もキモいって言うんじゃないわよ!!話しかける勇気がまだないの!!いいの、ほっといて!」 「そーゆーわけにもいきませんので。へぇー、あの男ですか。」 静龍はひょこっと顔を覗かせて、フンと鼻で一蹴した。ちょっと! 「何鼻で笑ってんのよ!ほら、素敵でしょ??はぁ~~っ、かっこいい、最高、目の保養、正義…」 私はこう言いながら、もう一度そちらに目を向ける。視線の先には、花屋さん。色とりどりの花に囲まれて、にこやかに笑う男性が1人。 彼がこの私のお目当てよ。 「ねぇほら、素敵でしょ?日本に来た甲斐があったってもんだわ、あの柔和な物腰、花を見つめる甘い視線、どれをとっても本当に綺麗なの。美しいわ、最高よ、何時間でも眺めてられる…。」 優しい微笑みを浮かべて、花をお手入れするその姿に私は一目惚れしたの。今まで私の周りにあんなに洗練されて、清らかで美しい人いなかったわ! 「歳、きっとそんなに変わらないわよ、大学生のバイトだと思うんだけど。」 「高校生に手を出す大学生はゴミクズと相場が決まってますよ。梅麗さま、知らないんですか。」 淡々とペラッと余計な事を言う静龍。 うっさいわね!! 彼のことをゴミクズだなんでどの口が言うのよっ! 私は腕を組んで静龍を見上げた。 「お黙り。どの口が人の道について偉そうに語るのよ、」 「ええそうですね。」 静龍が笑う。 「我らは所詮、外道。 梅麗さまこそお忘れですか?あなたは蔡家本家の、一人娘だということを。」
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