睨む龍

3/15
251人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
夕食は、懇意にしてる懐石料理の店に行ったわ。 日本の懐石料理って凄いわよね、一つ一つに趣向が凝らされてて繊細。どの国の料理にも良いところがあると思うけど、私、日本の料理ってだーーいすき。あと生魚最高。 荘厳な離れの個室で美しい食事を頂いたあと、縁側で庭の枯山水を見ながら、私は夜虎(イエフゥー)とサシで話をした。 静龍(ヂィンロン)?座敷のテーブルで頬杖ついて胡座かいて待ってるけど。糞だるそうに。 「いいんですか。婚約者殿を放っておいて。」 コソコソと、夜虎がまるでナイショゴトのように囁く。私はプイッと頬を膨らませた。 「…いいのよ。アイツ、私のことナメてるわ。好き勝手するのよ。礼儀も何もあったもんじゃない。」 「んー…。かわいい婚約者の前で素直になれないだけだと思いたいですね。」 夜虎は穏やかにこう言うと、池に浮かぶ月を見下ろした。風で水面が揺れると、それに合わせて月もユラユラと形を歪ませる。 夜虎って、静龍よりちょっと背は低いけど、スラッとしててすごくいい香りがするの。それに、なんていうか、艶めかしい。深入りするとアブナイ男なんだろうなって感じ。でもそれを隠すかのようにいつも朗らかに笑ってて、それが逆に妙な色気を増大させてるのよ。 「私のことかわいいだなんて思ってないわよ。脳筋脳筋ってそればっかり。」 「はは。脳筋とは。」 「笑わないでよ、私、怒ってるんだから!」 チラッと静龍の方を見ると、静龍もチラッとこっちを見てた。で、ものすごい不満げな顔で舌打ちしやがった、あの野郎。 「アイツっ、また…!」 「落ち着いてください、梅麗さま。」 こう言いながら、夜虎が私の傍に更に寄る。そして、私の頭にポンッと手を置いて自分の方に引き寄せた。 「全ては梅麗さまの思うままに。本当に嫌だと思うなら、黒麟さまに伝えたほうが宜しいでしょう。その時は僕も一緒に説明しますから。 …あと、気になるのは…」 夜虎が私の耳元で、本当に耳にキスされちゃうんじゃないかってくらいの近さで囁いた。 「彼は青龍分家の墨子(すみご)。…用心を。この結婚は、彼にとっては成り上がりのチャンス。不遜な態度を取るのは、彼が『自分は未来の(ツァイ)家本家の当主なのだ』と(おご)っているからなのかもしれません。彼にしてみれば、当主になれるのであれば、誰と結婚でも構わないでしょうし…」
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!