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白の僧正
先ほどから一時間、俺は手元のスマホの画面をじっと見ている。
日本人ほど効率の悪い人種はいない。
これは世界にでると、つくづく実感する。
組織としても、個人としても、あまりにも無駄が多すぎるのだ。
おそらく傍から見たら、今の俺ほど無作為に時間を浪費しているバカはいないだろう。
都内の、高級ホテルのティーラウンジともなれば、外国人のビジネスマンやその家族も珍しくない。
昼間から、日本人の二十代半ばの青年が、何をするでもなくただぼーっとスマホの画面を眺めているだけ。
彼らからしてみたら、滑稽かつ、不思議なことこの上ないだろう。
ビジネスをするでも、趣味にふけるでも、誰かとコミュニケーションをとるでもない。
ただ虚空を眺めているだけなのだから。
ただ最近、俺は思うことがある。
結局は終わり方しだいなんじゃないだろうか?
どんなに無駄に思えても、どんなにくだらない回り道でも、最終的に納得できる仕方でゴールを迎えることができたとしたら、それは、いつかまた思い出したい思い出の一つにできるんじゃないだろうか?
目の前ではファッションモデルのような女が、コーヒーを飲んでいる。確かに小顔だし、流行最先端のメイクをしている。しかしそれは所詮、人工的に作られた容姿の良さでしかない。
先程会ったエリーナの美しさとは比べ物にならない。
彼女は……
彼女はいったい……?
なぜ俺にあんなアドバイスを?
俺はすぐに頭を振った。
今は迷うときじゃない。考えるときじゃない。行動する時だ。
そうだ。まだやれることはある。今だからやれることが。
俺はスマートフォンの電話帳を開くと、ある番号をプッシュした。
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