赤の騎士

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 花村小学校はS県にあるごく普通の公立小学校だ。毎年二回、学級委員の編成がある。  ダイの言うとおり、委員のメンバーを決定する日に風邪で休んだのが失敗だった。もっともベッドで毛布にくるまりながら読んだミステリー小説は、僕のなかではかなりのヒット作だったのでそこまで後悔はしてないのだけど。  前任の新聞委員のメンバーが作ったのは、学級行事や転入生の紹介、図書室の新入庫図書についてのコラムがメインだった。  ちなみにまともに読んでいる人を見たことはない。  放課後、僕達六年二組新聞委員のメンバー四人は集まった。  僕達以外誰もいない教室にて、夕日が窓から差し込むなか、水菜と真子が物憂げな表情で席についている姿は、なかなかアンニュイな光景だった。単純に早く帰りたいだけかもしれないけど。 「で、何を書きますか?皆さん」  四つ並べた机を囲みながら、椅子にふんぞり返ったダイが長い足を組んだまま聞いてきた。 「ずいぶん偉そうね、あんたが編集長なの?」  水菜が聞く。 「いや、編集長はオレじゃない。和也だ」  そう言ってダイは僕を指差した。 「和也君!?」 「僕!?」  ダイは当然といった顔で頷いている。  まあ、逆らっても仕方がない。どうせ、ダイも水菜も真子もこういうのにはむかないんだ。 「いいよ、わかった。で、何について書く?」 「そうね、たとえばストレスが身体に及ぼす影響についてはどうかしら?」  さっそく水菜が答えた。  あれほど嫌がっていた割に、意外とやる気のようだ。 「あ?」  ダイのあからさまに不満そうな顔を無視して、水菜は続けた。 「知ってた? 今の小学生って親や周りのプレッシャーだったり、学校での友人関係だったりで、みんなものすごいストレスを感じてるの」 「ファンや事務所からの期待だったりね」  真子がため息混じりに頷く。 「……まあ、それもあるかもね。で、そのストレスが身体にいろいろな影響を与えてるんじゃないかって説があるの。例えば身体の成長が平均よりも遅れてしまったりとか」  ストレスで身体の成長が送れるなんてあるんだ。知らなかった……でも、それって小学生の学級新聞で扱うネタなのかな?大学の研究室ならまだしも。  ダイが何か言う前に、僕は口を挟んだ。 「学級新聞だからね。もう少し身近な話題がいいかもよ」  ふーん、そう、と水菜の冷たい視線を無視して、僕はダイに話を振った。 「身近なネタで、何かないかな?」 「分数や連立方程式の解き方のピックアップはどうだ?」  ダイが言うには、小学校で習う分数や連立方程式に躓いて、その後数学が苦手になる中学生や高校生は多いそうだ。  学級新聞で解き方のコツをとりあげたらどうだろう、とのことだった。ちなみに僕と真子は平均並みの成績だが、ダイと水菜の成績はかなりいい。 「なかなかよさそうじゃん。ねえ?」  僕はみんなに語りかける。これなら僕らの勉強にもつながるから、水菜だって文句はないだろう。  案の定、しぶしぶながら頷いている。  だが、ここで予想外の反対があった。 「ちょっと待って」 「どうしたの? 真子」  水菜が隣の真子に目をむける。 「実は気になることがあるの。それについてみんなの意見を聞いて意見を聞きたいの」
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