穏やかな日々

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穏やかな日々

土曜日の昼前、翔の家でゲームをする裕太がいた。 ただ、隣で対戦してるのは翔では無い。 「あ〜! 負けたぁ!!」 悔しそうな裕太。 「俺に勝とうなんて、十万年早いんだよ〜」 と、子供相手に、本気をだす大人。 翔の会社の同期の林風馬だ。 「ふうちゃん、手加減してよね〜!」 と言いながら、風馬に飛びつく裕太。 裕太が会社に行った日の翌週から、風馬は、翔の家に通っていた。 風馬は、人を寄せ付けないはずの翔が、裕太を大切にしている事に興味が湧いた。 会社にも居させるなんて、アイツの性格を考えたら、ありえないだろ!と半信半疑でマンションへ押しかけた。 そしたら、裕太の可愛さにやられ、毎週のようにこの部屋に来てしまっている。 裕太が「ふうちゃん」と呼ぶほどに…。 「ふうちゃん! ふうちゃん!」 と裕太が甘えた声で呼んだ。 風馬は、嬉しい顔を隠しながら、 「なんだよ〜」 と、そっけなく答えた。 「今日こそは、夕飯食べてくでしょ?」 と可愛くおねだりする裕太を見ながら、 「ん〜、それは、また今度だな〜」 と風馬は答えた。 裕太は、少しむくれながら、 「じゃあ、いつなんだよぉ!」 と風馬に聞くと、風馬は、何かを裕太の耳元でささやき、互いにコソコソ話を繰り返した。 それからの裕太は、時折考え事をしたり悩んだりしていたが、由依や翔の前では笑顔だったため、二人は裕太の変化に気付かなかった。 そして、冬になり、クリスマス前夜…。 部屋で一人考えてる翔がいた。 …買ってしまった。 裕太が欲しがっていたゲームを…。 由依さんに、「なんで高い物を!」って叱られるかなぁ…。 いや、それよりも余計に買ってしまった他のオモチャ達を見て呆れるかなぁ…。 でも、裕太に出会えて嬉しいこと、伝える方法…これしか浮かばないからな…。 ひたすら謝るかぁ〜! 明日は忙しいぞ!!! 裕太と約束した夜のクリスマス会。 約束した時、初めてクリスマスに感謝した! 明日は朝から飾り付け、夕方ケーキとオードブルを予約したお店に取りに行く。 そして、夜7時に裕太と由依さんを迎えに行く。 楽しみだな〜! 裕太、待ってろ!!! 明日はお前のために頑張るぞ!!! そう意気込んで、翔は早めに布団に入った。 クリスマスの朝、翔はマンション前で裕太を見かけた。 その時の少し沈んだ裕太の姿に、準備に追われていた翔は、気付けなかった。 裕太を見かけた後、慌ただしく1日かけて飾り付けをし、夕方、ケーキとオードブルをお店に取りに行った。 それから、夜の7時になった時、301号室のチャイムを鳴らした。
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