素敵なクリスマス

1/1
前へ
/16ページ
次へ

素敵なクリスマス

タクシーでマンションへ向かう道中、裕太は風馬に電話をかけた。 「ふうちゃん〜! 失敗したぁ〜!」 裕太の嘆く声に、事情を知らない風馬は、笑いながら、 「お前、何やらかしたんだ〜?」 と聞いてきた。 裕太が、 「今日、クリスマスでしょ〜? だからね、翔くんと母ちゃんを二人にしてあげたらね〜」 と、裕太が話しだした途端、風馬が、 「はぁ〜!? お前、それはダメだぁ!」 と叫ぶ声がタクシーの中に響いた。 「だって…」 と沈む声で裕太が返事をすると、今度は優しい口調で、 「翔はなぁ、今日お前に喜んでもらえるか悩んで悩んで必死だったんだぞ。」 と風馬が言った。そして、 「お前の仕事はな〜、翔に甘える事!ワガママいう事! アイツ喜ぶぞ!!」 と付け加えた。 電話を切った裕太に、翔は、 「風馬、何か言ってたか? 今度、余計なこと言うなって言っとくからな」 と、笑って伝えた。 その顔を見て、裕太は、 「翔くん、僕のワガママ、嬉しい…?」 と聞いた。 突然の質問だったが、 「ん? そうだな…。嬉しいかな」 と、また優しい顔で翔は答えた。 それを聞いて、裕太は、 「あのね…、いつもね、夜寝るときには居るのに、朝翔くんが居ないのが寂しいんだ。でも、翔くんのおうちにお泊りしちゃうと、母ちゃんを一人にしちゃうから…」 と、ずっと思っていた本音を翔に伝えた。 翔は少し考えて、 「実はな、俺のベッド、サイズデカくしたんだ。…由依さんが良ければ、3人で…寝よっか?」 と、由依と裕太を見ながら照れくさそうに問いかけた。 裕太はすぐに由依をみた。 由依は、少し恥ずかしそうにしながらも、微笑みながら頷いた。 裕太は、タクシーの中なのに、大きな声で喜んだ。 タクシーの運転手さんも笑って、 「いやぁ、幸せなクリスマスですねぇ〜!」 と言ってくれた。 マンションでのクリスマス会。 別のタクシーで来た祖父母と初めて過ごす5人の時間。 裕太にとって、とても幸せな時間だった。 裕太は、翔からのプレゼントにとても喜んだ。 そんなプレゼントの山を見て、由依は困惑した。 そんな由依に、『今年だけだから…』とひたすら謝る翔を、祖父母は嬉しそうに眺めていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加