別れ

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別れ

「また、やっちゃったぁ」 飛び上がって、大上段から振り下ろした剣。それは、ドラゴンの頭にクリティカルヒット!そこまでは良かったけど、高すぎた威力は、ドラゴンの硬い身体程度では止まらず、そのまま地面に激突。 結果、粉砕されたドラゴンのものと思われる粉塵が土埃とともに舞い上がり、大地には、隕石がぶつかったかのような大きな穴が。 単純なドラゴン退治ならそれで問題ないけど、これは採集クエスト。ドラゴンの鱗の中でも、とりわけ希少な、唯一逆さに生えた鱗、いわゆる逆鱗の入手が依頼内容。 それは、先の一撃でおそらく砕け散って消えた。 割れただけなら、まだ魔法で直せる可能性もある(かなり高額だと聞いた)けど、砂と化した逆鱗を戻せる賢者は、創作の中でも聞いたことがない。 「チッ!あんなガキ連れてこなけりゃ良かったんだ!」 「たしかに。魔法が使えないエルフなんて、なんの役にもたたないよ」 一緒に依頼を受けたパーティの人の目線が突き刺さる。 前の討伐依頼のときは、多少の事は笑って許してくれてたのに。 でも、自分が悪い。 エルフとして生まれながら、魔力は皆無。弓による遠方からの一撃必殺なんて技量もない自分は、剣を力任せに振るうしかない。幸い、エルフとしても類稀なる身体能力と、ドワーフなみの怪力で、対象は倒せる。 ただ、力加減がほんとうに分からない。 だから、初めはうまくいっても、すぐにパーティを追い出されるんだ。 森の中のエルフの里を出て数年、何度繰り返したか分からない別れをその場で宣告され、私はまた一人になってしまった。
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