3.誰も知らない、私以外は

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私は今、刀馬くんの家で お世話になっている。 病院に運ばれた時に 家に電話をされて 知られてしまったから。 私がこれまで どんな生活をしていたのか。 今日も駆けつけてくれたのは 家政婦さん。 刀馬くんを見て 睨んでいたので きっと 分かってしまったのだろう。 彼が お腹の赤ちゃんの お父さんだと。 「失礼ですが、あなたは……?」 家政婦さんが 私を連れて帰ろうとすると 刀馬くんの母親が 家政婦さんを止めた。 「刀馬くんのお母さん、この人は家政婦さんで……」 私のお母さん代わりだと 説明した時に 「あら、じゃあ他人ですね」 と刀馬くんの母親は 微笑んだ。 「羽奏ちゃんのお母様は、どちら?」 「奥様は……お戻りになっておりません」 「そうですか。それならば」 彼の母親は 自分の胸元に 私を引き寄せた。 「この子の義母になるのは私ですから 私に今後お任せくださいな」 刀馬くんの母親に 掴まれた腕が とても痛かった。
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