3.誰も知らない、私以外は

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それからは あっという間だった。 刀馬くんの母親は 家政婦さんに 私が見たことのもない 分厚い札束を渡して 何かを耳打ちしていた。 家政婦さんは ちらりと私の方を見てから 見たこともない速さで 会釈してきた。 それから私を振り返ることなく どこかへと走ってしまった。 「何を話したんですか?」 私は聞いた。 刀馬くんの母親からは 「子供は気にしなくて良いのよ」 と言われた もうすぐ母親になる私なのに。 母親になるからと言って 私が子供のままなのは 変わらないということなのだろうか。 少なくとも この人にとっては。
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