2.その倫理を守るのは、誰のため?

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それから私は 前と同じように 彼に手を引かれながら あの冷たくて寂しい家までの道のりを 一歩、また一歩と進んでいる。 その間、彼と私は 言葉を一切交わさなかった。 私の理由は簡単。 あんなことがあって 彼に自分からどう声をかけていいか 分からなかったから。 でも彼の理由はわからない。 暗闇のせいで、顔も見えない。 だから、手から伝わる 彼の体温からしか 彼のことが今は分からない。 そしてそんな彼の手は…… やっぱりとても熱かった。 熱いといえば。 玄関で、彼の母親に見送られた時 耳元でこっそり 「赤ちゃんができたら、必ず教えて」 と言われてしまった。 だから、今私の顔には 触れてほしくないと思った。 絶対火傷するほどの熱を 持っているだろうから。
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