2.その倫理を守るのは、誰のため?

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その男の人の後ろ姿を見て 急に目眩がした。 ちょうど数時間前 駅前のファーストフード店で 母と話をしていた男性だと すぐに分かってしまった。 お母さん。 誰ですか? その人は。 お母さん。 お母さん。 あなたがどんな表情を普段するか 私には分からないけれど そんな私でも 今あなたが普段しないような 特別な表情をしているのは わかる。 だって、その顔は…… 私が彼と一緒にいる時の 鏡の中にいる私と 気持ち悪いほど似ていると 思ってしまった。 お母さんは私の顔を 見る。 一気に熱めた女の顔を していた。 私のことを 嫌いと言いたげな顔では ないことは分かる。 でも、興味がないんだろうな ということも分かる。 でも、どうして? 私はこの女の人が 無関心になってしまうほどの 何かをしてしまったの? 「どうしたの」 「え」 感情が見えない顔で 感情の見えない声を お母さんはぶつけてきた。 こっちにおいで、と。 彼の母親のように 言ってくれるのか 一瞬だけ期待した。 「早く部屋に戻りなさい」 そしてあっという間に 打ち砕かれた。
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