帰り道

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「お待たせ」 下校時刻。 少し遅れて生徒用昇降口に行くと、クラスメイトで幼なじみの依藤朝水(よりふじあさみ)は、昇降口を出たところの階段に腰掛けて、文庫本を読みながら、私のことを待ってくれていた。 「ううん、大丈夫。本、読んでたから」 朝水は制服のカッターブラウスのボタンを、校則通りに一番上まで留め、リボンもキチッと定められた位置で結び、ブレザーの前ボタンも全部留め、スカートも校則通りの丈で穿いた、見た目通りの“the マジメ少女”だ。 静かに佇んで文庫本を読んでる姿がしっくりくる。 一方の私、久留間(くるま)あかりは、なんて言っていいか分かんないけど、まあ所謂ふつーの今時の女子高生。“スカート短いぞー”とか、“襟元開きすぎっ!”って、たまに生活指導の先生に怒られるけど、それ以外は至って普通のつもり。 朝水と私は、小学校からの幼なじみで、家も近所。小中高と時々クラスが離れることはあっても、高校二年生までずーっと一緒に過ごしてきた間柄。 そんな朝水のことを、私はもう30分近く待たせてしまっていた。 その理由はといえば…。 かれこれ30分ほど前のこと。 今日の帰りの終礼後、私と朝水が教室を出ると、どこからともなく現れた同じクラスの濱口くんが、私の前に立ちはだかった。 「久留間さん、ちょっと…」 濱口くんのただならぬ表情で、なんとなく要件を察した私は、朝水に昇降口で待っててもらうよう伝え、濱口くんの後ろについて屋上に向かった。
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