帰り道

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「おめでとう、あかり。濱口くんの用件って、あかりへの告白だったんでしょ」 歩きながらの帰り道。 人気が途切れた瞬間、朝水が私の手を握って、微笑みかけた。 「あ、うーん…、えーっと…気付いてたんだ?」 「そりゃ、気づくよ。濱口くん、顔真っ赤だったし、挙動不審だったから。 あかりも、濱口くんのこと好きだって言ってたし、よかったね」 朝水は無理しているのか、その声と、私の手を握る朝水の手は、少し震えていた。 「ううん。断ったよ。私、やっぱり濱口くんのこと、冷静に考えれば、そんなに好きじゃなかったしー」 「そうなの?」 「うん。やっぱ濱口くんみたいなチャラ…、陽キャは苦手かなー」 “チャラ男”と言いかけて、朝水の好きな濱口くんのことを蔑むのはマズイと気づき、慌てて言い換えた。 「そうなんだー」 手を離しながらそう言うと、朝水は私に顔を見られないようにするためか、下を向いた。 多分、濱口くんが私と付き合わなかったので、ホッとしてるんだろう。 少し頬の緩んだ朝水の横顔を見ながら、私はカリッと唇を噛んだ。 まだまだこの気持ちはそっとしておきたかったのに、濱口の奴め…。 そう。 私が好きなのは、濱口くんじゃなくて、朝水なんだ。 幼なじみとして、友人として。 それ以上に、恋愛対象として。 私は朝水のことを、いつの間にか好きになっていた。 このでも、気持ちは朝水に知られてはいけない。 知られたら、もう一緒にいられなくなる。 だから、ずっと封印してきたのに。 あの宿泊研修の恋バナの時も、バレないようにウソついたのに…。 私が濱口くんの告白を断ったのを聞いて嬉しそうにする朝水の横顔見ちゃったら、ただでさえモヤモヤしてたのに、抑えられなくなりそう。
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