第1話 人妻になってから言われましても……

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第1話 人妻になってから言われましても……

 今日は向日葵(ひまわり)が一ヵ月前から楽しみにしていた飲み会だ。  名目としては、向日葵の所属する会社の忘年会である。しかし向日葵の会社は社長の勝又(かつまた)里香子(りかこ)が若くして立ち上げた企業で、創業してからたったの二年、しかも七人の従業員は全員同じ高校の卒業生だ。事業内容は一応プロモーション企業ということになっていて、沼津市の移住促進や観光案内などを手伝う広告会社のような存在だが、まだまだ手探りである。現状は沼津のためならどんなことでも請け負う何でも屋で、最近はプラザヴェルデ――駅の北口にあるイベントホール――にラブライブサンシャインのキャラクターのプレートを立てるだけの肉体労働までしていた。仕事というよりバイト代の出るサークル活動だ。  そんなわけで、今日の忘年会も、社長の子分たち、やはり同じ高校を母校とするバレーボール部のOB、OGばかりが総勢十六名も集まった。内輪の仲良しグループ、しかも全員飲んで騒ぎたい盛りの二十代である。地元の飲食店に貢献するということで、沼津駅から徒歩数分、駅前で一番商店が多い商店街である仲見世通りの創作料理の居酒屋を予約したが、とんでもない宴会になることを予想して里香子はあらかじめ貸切を頼んでいた。向日葵は社長のそういう判断力、行動力、統率力を信頼している。向日葵が幹事でも同じことをしただろう。要所要所で二人は似ていて気が合う。
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