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「みんな『うわー、うみだ、うみだー』といって おおはしゃぎ。
かいがんせんに ならんで、みんな きもちいい しおかぜに ふかれていると、『しんだいとっきゅう』たちが、しょくどうしゃ から のみもの や ごはんを とりだして、みんなに くばってくれました。
みんなニコニコ、パクパク、ゴクゴク。
『おいしー』っていうこえや、『ハハハハハ』って わらいごえが、いっぱいいっぱい きこえてきて、きょうは たのしい ピクニックになりました。
あれれ、ピクニックしにきたんだっけ?
まあ、いいや。たのしかったからね。
おしまい」
母ちゃんが読み終わって絵本を閉じました。
最後のページの絵は、こだまくんが、にっこり みんなと サンドイッチを たべている絵で終わってる。コレをみて わい いつもサンドイッチが食べたくなるんや。
「母ちゃん」
「うん? あー、明日、サンドイッチにする?」
「うん」
とわいは元気に答えた。
「サッサッねよねよ」
母ちゃんが電気を消して部屋を暗くした。
今日は電車の夢が見れそうや。この絵本読んでもらった日は、いつもそんな気がしたんや。
: : :
それから40年弱の月日が流れ。
今、わいは自分の子供達にこの絵本を読んであげている。
この絵本はちょっと時代が古いから、出てくる電車に不満がある様やけど、(うちの子も電車が大好きなので、特にすきなラピートやらロマンスカーやら、新幹線の「ハヤブサ」や「みずほ」が出てこないことが不満らしい。)まあでも、楽しんで聞いてはいる。
大人になって読み返してみて、気づいたことが二つある。
一つは、最後のみんな仲良くサンドイッチを食べている絵には、いっぱい電車が描いてるけど、その中にリニアモータカーもいたんや。あの頃、まだ新幹線の「のぞみ」もない時代やけど。リニアモーターカーの存在はあって、夢の乗り物やってんなー。ちょっと、時間かかりすぎかも知らんけど。そろそろ実現しそうで、それを思うと大人ながらにちょっとワクワクするなーって事。
もう一つは、最後の奥付
「電車の好きのなっちゃんへ
いつもやさしく、なかよくね」
と描かれた文字と、わいの似顔絵。
子供達に、コレ誰? って聞かれるたびに、「子供の頃のお父ちゃんやで」って答えている。
母ちゃんの思いはもちろんやけど、なんかコレをみるたびに、無くなってしまった子供の頃の自分がここにいる様で、ちょっと嬉しくなる。 絵はそんな似てないけど、こうやって無邪気に笑顔で笑ってたんやろな。わいも。
そんな事を思いながら寝室の電気を消した。
「さ、寝よか」
「おやすみ」
「おやすみ」
Fin
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