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少年Aはエイリアンだった──。
正体不明の宇宙人。けっして異形の怪物や幽霊などではない、人間の容姿はしているが人間とは似て非なる者。見た目はふつうの、闇と病みに深層を侵蝕された醜いグロテスクな化け物。犯人は異邦人ならぬ異星人だった──というような、べつに当人がではなくとり憑かれてでもかまわないが、いっそのこと、そういう虚構じみた、荒唐無稽ながらとても馴染みのある、とてもわかりやすい物語の結末であればまだ、最低限とりあえず処理可能で安堵し終えることができるという意味で、どんなにかよかったであろう。
しかし、と刑事は考える。いまだ眼をどころか、顔さえまともに合わせようとしない、取り調べに立ち会っている女性警官にいたってはそちらへちらとも視線を向けることなく無表情で、硬直したように固まり着席したまま身じろぎしないAの不自然な態度を見て、ふとおもう。どこか、おかしい。どこか、微妙に違和感がある。カン、何の根拠もないカンだといえばそれまでだが、たとえば──。
たとえば、いまはインターネットやスマートフォンなど一見、当事者以外は外から容易に他人には窺い知ることのできないコミュニケーションの道具と手段も、たくさん一般普及している。従来の直接的、社会的な、対面での関係性がなくとも、ソーシャルネットワーキングサーヴィスというやつで何らかの繋がりができている可能性は否定できないのではないか。いまのところ被疑者は被害者の母子に対して表向きは無関心、無関係を装ってはいるが、じつは強烈な殺意を事件以前から懐いていてもおかしくはないような何か、ふたりを殺害するにいたってもおかしくはないような、常人にも納得できる犯行動機が何かあるとは考えられないか。
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