おめでとうを君に

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* 「わあっ! 雪! 雪! 雪だよ、圭くん!」  舞うように降り始めた雪を見て、彼女は小さな子どものようにはしゃいでいた。制服の上にダッフルコートを羽織っただけ。マフラーも手袋も、帽子もしないでいるのに、まるで寒さなんて感じていないようだった。クルクルクルクル、両腕をめいいっぱい広げてバレリーナのように踊っていた。 「なっちゃん、風邪ひくよ。ほら、コレして」  巻いていたマフラーを外して、菜月にかけてあげると、花が開いたようにフワッと笑っていた。クルっと回されたマフラーでその笑顔の口元が隠れてしまって、ちょっと残念に思った。 「圭くん! 初雪おめでとう!」  たった今、クリスマスのプレゼントでも貰ったかのように、菜月の瞳はキラキラと輝いていた。 「おめでとうって……コレってめでたいの? ただ寒いだけじゃん」と呟く僕に、菜月は楽しそうに「おめでたいの!」と言った。
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