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「ひゃー寒っ! わっ、雪!」
一緒に事務所を出たのは後輩女性の加納さん。僕の横で、悲鳴のような声を上げてそう言った。新年初出勤の今日は、朝からやけに冷えると思った。帰宅しようとした今は、チラチラとだが雪が降り始めていた。今シーズン初の雪だ。
「あーヤダヤダ、大野さん、早く帰りましょう! じっとしてても寒いだけです」
「ああ、そうだね。行こうか」
駅へと向かう道を、やや小走り気味に歩き始めた加納さんを追うように、事務所の入っている雑居ビルを後にした。
少し前を行く加納さんの背中は寒さの為に丸められ、肩が上がって首が埋もれている。かなり着込んでいるようだ。背が低く細っこいのに今はダルマのようだ。
そうだよな、寒いと普通はそうなるよな。ふっと思い出し笑いをした僕を、加納さんが振り返る。
「何ですか? 何か変でした?」
「ああ、いや、ゴメン。何でもない。ちょっと思い出し笑いをね…」
あれから何年経ったのか。計算しなくてもすぐに分かるのは、ほんの数日前に計算したばかりだったから。
七年。長いような短いような、そんな月日だった。
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