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Ⅰ
悪いことをしたら、吸血鬼が来て血を吸われちゃうよ。
この町の子供は、みんなそう言われて育ってきた。それは僕の育った孤児院でも例外ではない。孤児院と言っても小さなもので、子供は僕を含めて5人。町の教会も兼ねた建物で僕らはシスターと暮らしていた。
僕らがなかなか眠らない時や、言うことを聞かない時には、シスターはいつもそう言って僕らを叱っていた。
オバケや幽霊ではなく、どうして吸血鬼だったのか。シスターに聞いたことがある。
「それはね、昔吸血鬼がこの地に蔓延っていたからよ」
ベッドに入ってもなかなか眠れない僕を優しく撫でながら、シスターはそう答えた。
「吸血鬼はね、人間の血を吸って生きているの。だからここに住んでいた人の多くは、吸血鬼に殺されちゃったのよ」
「じゃあどうして、今人間が住んでるの?」
僕が疑問に思って聞くと、シスターは静かに答えた。
「残った人間で、吸血鬼をみんな火の海に沈めたのよ」
「火の海?」
「吸血鬼をみんな燃やしたの」
僕は思わず身震いする。燃やされるなんて、僕なら絶対に嫌だ。
「でもお伽噺よ。さあ、もう寝なさい」
シスターは微笑んで、寝室から出て行った。僕は余計に眠れなくなってしまったのを覚えている。
そんな話を聞いたあと。
「死んだ人が復活するおまじない、知ってる?」
孤児院で一番小さなデイビッドが、そんなことを言い始めた。
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