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「白い百合があるでしょう。その花びらの1枚に、自分の血を1滴垂らすんだ。それを死んだ人のお墓の前に置く」
4歳のエミリーが顔をしかめた。痛いことが何より嫌いなエミリーは、血という言葉を聞いただけでも不愉快らしい。
「一晩待ってから、その赤い花びらが無くなってたら成功。夜にお墓の前に行けば、死んだ人に会えるのさ」
デイビッドの言葉に、トムは立ち上がった。
「よし、俺が試してくる」
一番年上で、兄貴風を吹かせたい年頃でもあったのだろう。
「ええっ、夜のお墓に行くの? やめときなさいよ」
6歳になったばかりのキャシーが止める。妹や年下の子供の手前、お姉さんぶってはいるが、怖いことは苦手なのだ。
「なんだよ、怖いのか? いいじゃん、キャシーが行くわけじゃなくて俺が行くんだからさ!」
トムは意気揚々と部屋を出て行った。おおかた庭に咲いている百合の花でも取りに行ったんだろう。
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