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【 エピローグ 】
モエ姉が、なぜか僕の胸の中で泣いている。
あのいつも明るい彼女が、今は小さく震えながら、涙を流している。
僕も思わず、モエ姉の背中に両手を回して力強く抱きしめた。
「一緒に、帰ろう……。私たちの家に……」
「うん……」
そう答えて、もう一度だけ、モエ姉のやわらかな体をギュッと抱きしめる。
でも、なぜか突然、彼女が変なことを言い出した。
「私ね、智弘くんに告白されちゃった……」
「えっ! 智弘に!? あいつ……」
「あっ、安心してマモちゃん。私、ちゃんと断ったから」
そう言いながら、少し上目遣いで彼女は笑った。
「その時ね、聞いちゃったんだ。マモちゃんが、私のことどう思ってるのか……」
「えっ? 智弘に……?」
「うん……」
彼女は少し俯くと、そのかわいらしい口からこんな言葉が漏れた。
「復活の呪文、使ってもいい?」
「えっ? 何の復活……?」
「マモちゃんの……、恋の復活……」
急に彼女は、僕の体から離れると、5、6歩走り出し、くるりんぱヘアーを靡かせながら、またこちらを振り向いた。
そして、いつもの彼女の明るい声が、この夜の川沿いの土手に響き渡る。
「私たち恋してもいいんだよ♪ マモちゃん、知らなかったでしょ? 私たち法律的にも、結婚だってできるんだから♪」
「えっ……?」
その時、彼女の瞳からキラキラと月の光に輝くものが風に飛ばされ、僕らの恋の呪文を天に届けてくれたような気がした。
恋してもいいって、今まで知らなかった。
今日、それを知れて本当によかった。
僕は自然に笑みが零れる。
少しだけ遠回りだったけど、やっと僕たちの恋が、ここからスタートするんだ……。
この土手に佇んでいたふたつの影が、ゆっくりと動き始め、近づいてゆく。
そして、彼女は恥ずかしそうに俯いていた顔を上げると、瞳を閉じながら、つま先を少しだけ上げた。
1年経って、僕の方が少しだけ背が高くなっていたから……。
彼女の口元の左側にある小さなホクロが、また僕を誘惑する……。
~アネガチャ 恋も家族もガチャリンコ~
(了)
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