【 四人ガチャ 】

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【 四人ガチャ 】

 何とも不思議な光景だ……。  いつも迎えている朝とは、全く違う。  母さんが離婚してから、いつも朝食は一人でパンを焼いて静かに食べていたのだが、今日の朝はまるで他人の家のようだ。  食卓には、ちゃんとしたご飯が並び、テーブルを挟んで目の前に母さんが、その横に黒縁ダンディーおじさんが、そして、僕の左横にはモエ姉が座っている。  この四人での初めての朝食。  黒縁ダンディーおじさんが、僕を見て微笑んでいる。  母さんもなぜか、今日はとても嬉しそうだ。  そして、モエ姉は……。 「ねぇ、お父さん聞いてよ。マモちゃんね、私のことベッドの中で抱きしめて来たんだよ!」 「おっ、おお、そうか……。昔みたいに仲良くてよかったじゃないか……」  モエ姉は、何を言っている……。そうじゃないだろ。  抱きついて来たのは、モエ姉の方だから……。 「あら、ふたりとも、小さい頃みたいで楽しそうでよかったわね」  母さんまで何言ってるのさ。  僕は何もしてないから……。 「マモちゃんね、夜中に多分、私に変なことしてたと思う」  皆の顔を順番に見て、黙っていたが、もう限界だ。  このままでは、僕は変態になってしまう。弁解せねば……。 「し、してないよ! してない、してない……」  慌てて箸を置くと、手と首を全力で横に振り否定をするが、なぜか母さんと黒縁ダンディーおじさんは、嬉しそうだ……。  まだ、一緒に暮らし始めて1日も経っていないというのに、これでは前途多難だ……。  僕たちのことを気にも留めず笑っている母さんと黒縁ダンディーおじさん、そして、僕のことを変態だと主張しているモエ姉……。  この家族、いや、この四人ガチャ、とても違和感がある……。
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