【 ああ神様 】

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【 ああ神様 】

 モエ姉とのことは、学校でもすぐに皆の耳に入った。  僕がモエ姉のことを好きだっていうことは、クラスの親友も知っている。  だから、余計にややこしい……。 「お前、萌ちゃんと一緒に住んでるんだってな。聞いたぞ」 「あ、ああ、そうだけど……」  学校の帰り道の川沿いの土手で、部活仲間でもある爆発ヘアーの親友、智弘(ともひろ)がそんなことを言ってきた。 「良かったじゃんか。お前、萌ちゃんのこと大好きだったもんな」  ニヤニヤしながら、いやらしそうな顔でそんな暢気なことを言ってくる智弘が信じられない……。 「バカ、全然よかないさ。もうこれで(こく)ることもできないんだぞ!」 「あははは、そうだったな。もう、萌ちゃんは、お前のお姉ちゃんだもんな。俺が代わりに告ってやるよ」 「それだけは、やめてくれ!」 「あははは」  こいつは暢気なもんだ。  僕は失恋したんだぞ。告白することもなく、『』で……。  すると、その話題の彼女が何ともタイミング悪く声をかけてくる……。 「マモちゃーーん♪」  声のする方を見ると、かわいらしい紺のブレザーにタータンチェックのスカートを履いたくるりんぱヘアーのモエ姉が橋の向こうで、自転車に乗りながら手を振っている。 「おお、早速、萌ちゃんが現れた。うひょ~、それにしても相変わらずのプルンプルンの胸が揺れちゃってるぅ~。かわいい~♥ 俺、弟ちゃんの前で告ちゃおうかな?」 「絶対すんな!」  このシチュエーションが恋人同士だったら、どんなに良かっただろう。  今、現実に起きていることは、自分の姉が弟にばったり会って、何を話したらいいのか分からず、無言で家に帰る。  ただ、それだけのこと。 (ああ~、神様、どうか今までのことが夢でありますように……)  頭を抱えつつ、モエ姉の弾けるようなその笑顔を見つめながら、天の神にそう祈った……。  ――そんな僕の恋心を誰一人理解しないまま、時だけが過ぎ、僕が中学3年生に、そして、モエ姉が高校3年生になった時、突然、事件が起きた。
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