一章「二」

6/9
前へ
/201ページ
次へ
向けられる、端麗な顔立ちのなかで、白い歯が光っている――。 ただの官にしておくにはもったいないと、側においてみた。 だが、グソンはドンレなど見ていない。彼女の体を通り越し、その力を見つめている。 甘いささやきも、たゆたう吐息も、すべて形だけのもの。 ドンレの体躯などなくてもかまわないのだ。 ――わかっている。 溺れてしまった快楽は、とてつもなく深いことも。 あの肌を手放すことを思えば、受けるおなざりな愛撫にも、がまんできた。 いや、今では、それにさえ、ドンレは酔いしれていた……。
/201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加