一章「二」

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妃の父君がみまかって、宿下がりを果たしている今、男の身を、もてあましているのだろう。 ……あの求めようは、そうに違いない。 「お前、しばらくここに通うのだろう?」 「ええ。私は、あなた様のしもべ……」 しもべなどと、ぬけぬけと言い張る寵妾の姿は、ことのほか滑稽に見えた。 だが、互いにここから抜け出すこともかなわず、骨を埋める運命。 細かなことで、目くじらをたててどうする。 甘美な時をすごせられるなら、多少のことは……。 くつくつと笑いながら、ドンレはグソンを見送った。
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