一章「三」

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一章「三」

王である、ジオンが訪ねているにもかかわらず、屋敷には警護の姿がみあたらない。 ジオンがそうさせていた。自分だけの秘園に無粋な兵など入れたくないと――。 ミヒの部屋の露台(テラス)は、小さな中庭に面している。 今は山吹の花が、黄色く鮮やかに息吹いていた。 その一角、染まる底木の脇に、女と見まがう若者が立っている。
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