一章「三」

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ミヒは知っている――。 彼が屋敷に来るのは、宮殿で王が必要になったという事だと。 ウォルは、人知れず、ジオンを迎えに来る。そういう役割なのだと、わかっていたが、格好は市井の人間と変わりない。 宮殿に、さらに、王の側に出入りする者ならば、少なくとも文官か武官かを示す束帯を(まと)っているはずなのに……。 宮殿には、細かな約束事がある。 当然、それは出入りする者の装いにも及んでいた。
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