一章「三」

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学問や思想を司り、智をもって政を支える文官は、紺の衣を纏い、腰に邪気を遠ざける玉の根付けを携えている。 帯刀は許されないが、位ある者のみ護身用に合い口を忍ばすことが認められている。 とはいえ、きらびやかに装飾されたもので、実用的ではなかったが……。 一方、武で国を支える武官は、朱の衣に身を包む。 位が付くと襟元に刺繍を施し、品格を高めていく。 文官と違い帯刀は認められ、武勇を上げると、持つ剣は大振りになっていく。 さて、両者を支える宦官(かんがん)という役目の者がいる。黒い衣を身につけているということ以外、世間には知られていない。 宦官はめったなことで宮殿から出ることはなく、下々の者は、彼らの姿を見たことがないと言ってもいい。 だが、存在の意味は十分に理解されていて、男を捨てた宮殿の囲われ者と、陰口を叩いていた。
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