一章「三」

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ところが、ウォルはいつも趣味の良い色あわせの衣を着こなしている。 腰には金と玉の飾りが付いた、豪華な剣を差しているから、武人なのだろう……か。 しかし、体つきはとても華奢(きゃしゃ)で、上背(うわぜい)があることを除けば女のミヒとそう変わらない。 面差(おめざ)しも、傷一つ見られず、たたえる眼差しには雄々しさもない。 歳もミヒと近い気がする……。 「来月、お邪魔していいかな?しばらく、ミヒの側にいたいんだ」 言いながら、ウォルは身震いした。 まだまだ、朝は花冷えが厳しい。 来月、王は妃を迎える。そうなれば、しばらくジオンはここへ通うことはないだろう。 ウォルは、そう言っているのだ。 「心配しているの?私は、大丈夫よ」 「たぶん。でしょ?だから、側にいてあげる」 ジオンとは違う、まるで兄のような眼差しをミヒは感じた。
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