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「どうした?」
ミヒが目を開けると、確かにジオンがいた。
飛び抜けて美男というわけではないが、一国の王らしく、凛とした顔を何やら曇らせている。
「また、見たのか?いつもの夢を」
「ええ」
「気が立っているのか?ん?」
川面に突き出す崖から、色とりどりの花びらが、風に乗って舞い落ちていく――。
ミヒがこの夢を見るたび、ジオンの機嫌は悪くなる。
今夜もまた、渋い顔つきで寝台をぬけだすと、黙って蝋燭の明かりを灯した。
……どうして、ジオンがいる時に、この夢を見るのだろう。
灯った明りに気付いた侍女に、なんでもないとジオンは声をかけていた。
なんでもなくはない……。このまま帰ってしまうのに。
ジオンに背を向けるように寝返ると、ミヒは目を閉じた。
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