一章「四」

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――軽やかな笑い声が響く中、小船は悠々と水路を進んで行く。 「ああ、もっと、ウォル、もっと早く!お願い!」 ミヒは、船縁(ふなべり)から身を乗り出して、声をあげた。 手で、沸き起こる水面の波を探っては、船頭役のウォルに、櫓をこいでくれと、ねだってばかりいる。 ジオンは、はしゃぐミヒを眺めつつ、船首に取り付けられた天蓋の下に、体を投げ出していた。 同時に、ウォルから、ミヒの落胆振りを聞かされていただけに、はしゃぐミヒの姿に、胸をなでおろしている。 小船は、裏庭を目指し進んでいく。 屋敷内には、水路が巡らされ、裏庭の池へと流れこんでいた。 貴族の屋敷には、たいがい風水の理念から水路や、人口の池が備わっているが、都を探しても、船遊びができる規模のものはない。 ジオンは贅を尽くした。ミヒが屋敷で退屈しないようにという思いもだが、彼自身、楽しむことを考えていた。
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