一章 「一」

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「心配なのだよ。お前はいつも同じ夢を見る。気づいていないのか?とてもうなされている」 少し節太な指が、ミヒの背を走った。 「私が正妃をめとるからか?だから、お前は……気が立っているのだろう?」 いつになく、物悲しい声が流れる。 ――ミヒは、ジオンの愛妾であった。 幼い時、親と生き別れたところを、ジオンに拾われた。 物心付いた時には、すでにこの屋敷で暮らしており、ミヒは自分の過去を知らなかった。 生まれがはっきりしないと、ジオンの住居である宮殿に上ることもなく、王の私的な女として、用意された屋敷で、一人過ごしているのである――。
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