120人が本棚に入れています
本棚に追加
「心配なのだよ。お前はいつも同じ夢を見る。気づいていないのか?とてもうなされている」
少し節太な指が、ミヒの背を走った。
「私が正妃をめとるからか?だから、お前は……気が立っているのだろう?」
いつになく、物悲しい声が流れる。
――ミヒは、ジオンの愛妾であった。
幼い時、親と生き別れたところを、ジオンに拾われた。
物心付いた時には、すでにこの屋敷で暮らしており、ミヒは自分の過去を知らなかった。
生まれがはっきりしないと、ジオンの住居である宮殿に上ることもなく、王の私的な女として、用意された屋敷で、一人過ごしているのである――。
最初のコメントを投稿しよう!