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宮殿の裏方には、後宮という、別の力がある。
王といえども、逆らうことはできず、ジオンはミヒを側に上げることができなかった。
宮の中では、血がすべて――、たとえ、側室であろうとも、自分の血筋を語れない女は一人もいない。
ミヒは、当然除外される。ならばここに置き、くだらないあつれきから守ってやろう。
ジオンはそう思い、ミヒを心底いつくしんでいた。
しかし、横たわる彼女の機嫌はすこぶる悪い。
自分は、宮に登れない女なのだと怒っているのではなく、ジオンが帰ってしまうと、一人残されると、すねているのだ。
毎度の事であった。
だが。
小さな背が、発するいらだちは、いつもと異なって見えた。
来月、ジオンは、王として、正妃を迎える。
まだ、あどけない、少女と言うべきミヒにとって、この現実は受け入れがたい事であろう。
ジオンにも、痛いほど、わかっていた。
しかし、いったい、自分に何ができようか。
若き王は、国のために、進まなければならなかった――。
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