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一章「二」
広大な宮殿の奥深く。秘め事のように外界から隔離された場所がある。
幾千もの女人たちが住処、後宮である。
主である王が通ってくるのを待ち、日々住人たちが美しさを競うこの場所は、桃源郷と見違うかぐわしさを放っている。
むろん、緋色の壁で取り囲まれた夢のありかとして、王以外の男子の立ち入りを認めていない。
ゆえに、束ねるも、女自らの手にゆだねられていた。
女官長その人に……。
後宮をまとめ上げるだけでなく、政に口を出すことも由とされていて、時に、王をしのぐ勢いを見せていた――。
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