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4.語られた真実
マッダレーナ・マッジョーレ教会に、絶えて久しい重大な知らせが舞い込んだ。時のヴァチカン教皇、フランシスコ三十八世がここを訪れると言うのである。地上における神の代理人たる彼もまた、復活の聖女を一目見たいと望んだのだ。
その知らせにマリアは慄いた。
「そんな畏れ多いことはできません! わたくしのような卑しい者が聖下におめもじするなんて……!」
「何をおっしゃるのです、聖女さま。あなたは天の国から再び地上へ降り立った、この上なく祝福された存在であられるのですから――」
「やめて!」
マリアは顔を覆っていた手で、リベリオにしがみ付いた。
「お願いです、おやめになって。わたくしを『聖女さま』などとお呼びになるのは」
「しかし――」
「どうか、ただマリアと。少なくともリベリオさまの前でだけは、ただのマリアでありたいのです」
マリアの手がリベリオの頬に触れる。焦がれるように僅かに開いたその唇に、彼は目が吸い寄せられるのを感じていた。だが、その先に何が待っているのか、この暴れ回る感情をどうしていいのか、彼にはわからなかった。
結局、彼女の肩に手を添えて、リベリオはマリアを引き離した。紅潮した顔を俯いて隠し、精一杯の平静を装って言う。
「……わかりました。では、マリア。何も怯えることはありません。どんな時も、私が傍についておりますから」
マリアは泣いた。さめざめと泣いた。
リベリオがその胸に抱き留めてくれないことも、無骨な手がぎこちなく彼女の髪を撫でるのも、彼女の悲しみを増長させていた。
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