4.語られた真実

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「マリア――っ」 「いいから。耳をお澄ませになってみて」  耳朶に触れる柔らかな膨らみ。布越しに伝わる彼女の温度。  ドキリ、ドキリと心音が耳を打つ。だが、しばらくその甘美な温もりに身を預けたのち、リベリオは奇妙なことに気が付いてしまった。  なぜ、心音がひとつしかないのか。  煩いほどに耳を打つのは、緊張した彼自身の心臓が奏でる音。  どれだけ耳を(そばだ)てても、マリアの華奢な体から、心臓の音が聞こえてこないのだ。 「……どういう、ことなのです」  マリアは悲しげに表情を曇らせる。 「わかりませんか? わたくしは人間ではないのです。わたくしは対人殺戮用アンドロイド――あなた方を殺すための兵器です」  リベリオは言葉を失った。  彼には意味がわからなかった。 「アンドロイド? とはなんですか? 私たちを殺すって――」 「人間ではないのです。いえ、そもそも生物ですらないのです。わたくしは機械(マシーン)です。わたくしは人間によって、人間を殺すために造られました」  それから、彼女は自身の身の上を語る。  おそらくだが、彼女を造ったのは純自然主義者。ヴァチカン教徒にとっての異端者たちであった。  彼らは自然こそが地球を治めるべきであり、この星の支配者だなどと驕った人間たちをあらゆる崩壊の根源であると信じていた。だからこそ最終戦争(アルマゲドン)は勃発し、だからこそ、大地も海も何もかも、汚染されて死に絶えてしまったのだと。  多くの者たち同様に戦火によって、また一方でヴァチカン教会によって弾圧され、終焉を間近に控えた純自然主義者たちは、未来に向けて死の贈り物をした。自分たちが死に絶えてからも、悪しき人間たちを葬ることができるように。この星を完全に浄化できるように。  それが、マリアであった。
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