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「おはよう、藍」
いつもと変わらぬ朝だった。
私なんかに話しかけてくる珍しい人が、いることを除いて。
その相手が、かつての親友の松井栞であることに驚き、オドオドと私の視線は定まらず空を彷徨う。
心臓はバカみたいに早鳴って、脳内は警戒信号が鳴り響く。
なぜ? どうして? なんの罠?
栞とはもう半年も口を利いていないのに……。
「え、っと……」
「どしたの? 藍? おはよ?」
「お、はよ……」
声が尻すぼみになってしまうのは、学校では全く声を出していなかったからだ。
チラリと後ろを振り返るとクラスメイトたちの注目が、私と栞に注がれている。
その目は、全て私を責め立てているように感じて怖くなり、背中を丸めて首をすくめた。
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