運命の別れ道

11/21
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
この間、学校で受けた模試の結果が、帰りのホームルームで返された。 うちのクラスは半数ぐらいが、この模試を受験している。 勿論、亜紗美も拓もこの模試を受けていない。亜紗美は実家を継ぐし、拓は東京の会社の柔道部に入ることが決まっているのだ。 この間、県内の私立に行くと親の前でいい子ぶったけれど、まだ東京の大学への未練があった。 けれど、この模試の結果が良ければ両親にお願いできるかもしれない。 模試の判定結果を期待いっぱいで見た。 東京の国立大学はE判定、地元の国立大学はD判定、地元の誰でも行ける私立大学はA判定。 私はきっとこの先、ずっとこの街で暮らすのだろう、そんな気がする。 県庁所在地の市の隣の隣の隣にある寂れた町。 せめてこの街を出られたら、何かが変わるかもしれないと期待していたのに。 先生の話もロクに聞くことができない。 帰りの挨拶の後、誰よりも先に教室を駆け出した。 下駄箱の靴が物の見事に揃っている。白い上履きが一つも見当たらない。 今日は一番に高校を出たらしい。 自転車を引きながら、校門を出た。 そして家に帰るには右に曲がらなくてはいけないが、今日は左に曲がった。 高校のすぐ隣の馬鹿でかい公園に入ると、人目につかなさそうな隅っこのベンチに腰掛け、空を見上げた。 雲が一つ、一つゆっくりと青い空を流れていく。 「どうしたんだよ、元気ねぇな」 急に我に返り、視線をまっすぐに向けると、そこには拓がいた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!