運命の別れ道

10/21
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
トイレに行き、鏡をチェックする。 目も充血してないし、瞼だって腫れていない。 何故だか急に数本の髪の毛の乱れが気になり、水で濡らし強制的に言うことを聞かせた。 「よしっ!」 自分に気合を入れ、トイレから教室に向かって歩き出す。 教室には拓がいるんだから そう自分に言い聞かせ、平常心を保つ努力をする。 教室のドアを勢いよく開けると、そこは何の事はない、賑やかな朝の時間だった。 皆、それぞれにそれぞれの好きな事をしている。勉強している子や、携帯を触っている子、朝ごはんを食べている子や、おしゃべりで盛り上がる子達。 ふと、違和感を覚えて視線を元に戻すと、拓が楽しそうに笑っている。小百合ちゃん達のグループが拓を取り囲んで、何やらとても盛り上がっている。 「俺は、最後一本とって優勝したからさ」 「わぁ、すごーい!!拓って実はすごいんだね」 「実はって何だよ、失礼だな」 楽しそうな笑い声が起きた。 「拓って腕の筋肉凄くない?」 「ちょっと触らせてよ」 小百合ちゃんが甘えた声を出した。 「わぁ、すごーい!かたーい!」 女の子達の歓声が聞こえる。私は怖くてその現場を見ることができず、ただ黒板の日付を見ている。 12月5日(月)という文字が何故だか巨大化して襲ってきそうなくらい怖い。 思わせぶりなことしないでよ、拓のバーカ。 あの子達ともあんなに楽しそうに話すんじゃん。 拓にまんまと嵌められような気分。 勘違いしちゃったじゃん。 本当に拓のバーカ。 「何なのよ、あれは?!」 突然の声に驚いて、後ろを振り向くと亜紗美がいた。チェックのマフラーの両端をギュッと握っている。 「小百合達も拓狙いなわけ?この前、今度は拓狙いって言っておいた筈なのに、私が先に好きって言ったのに、ありえないんだけど」 亜紗美は口を尖らせた。 ありえないよね、友達が好きって宣言した人を好きになるなんて。本当にありえない。 来週はまた模試がある、しっかり勉強しないと。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!