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巡る縁と壊れゆく日常
風薫る5月、女子高生と思しき3人がファーストフード店にいた。今は中間テストの真っ最中。カウンターで注文を終えた彼女達はトレイを受け取り、窓際の空いている席に座った。
「ねぇ、今日のテストできた?」
ともちゃんが聞いた。彼女の名前は一条朋渚。細身で背が高い彼女は、涼しげな顔立ちをしている。
「さっぱりだよ。日本史って範囲が広すぎ」
長い黒髪の彼女が項垂れた。彼女の名前は夢野冬華。クラスではあまり目立たないが、よく見ると、目鼻立ちがはっきりとした美人である。
「3人まとめて補習確定だな、こりゃ。ていうか、明日もテストなのに、私達はここにいて良いわけ?」
おどけたように、ゆかりんが言った。彼女の名前は菜村優夏梨。肩まで伸びた栗色の髪を持つ彼女は、小柄で可愛らしいルックスだ。
「帰ったら嫌でも勉強するでしょ。戦前の腹ごしらえだよ。あと1日、頑張らないとなぁ」
遠い目をしてともちゃんが言った。
「そういえばさ、生徒会長の神冷先輩。今朝見かけたけど、やっぱり素敵だよねぇ」
ゆかりんがうっとりとした顔で、手に持ったポテトを見つめた。
「1年の2学期から生徒会長をやっている人って前代未聞らしいよ」
ともちゃんが、うんうんと頷く。
「でもさ、1年生で当時の生徒会長を引きずり下ろすなんて、どんな手を使ったんだろう。買収かな」
ぼそりと冬華が呟けば、2人が厳しい視線を寄越した。
「そんな、政治家じゃあるまいし、生徒会長になるために、お金を配ったりしないでしょ」
「実力よ、実力。周りから是非にと推薦されて、引き受けたみたい」
冬華は生徒会長を持ち上げる2人に、疑いの目を向ける。
「その話も怪しいと思うな。あの人は何かすごい権力と癒着しているんだよ」
「またぁ、冬華は何でも疑いすぎ。だいたい、すごい権力って何?」
「たかが公立高校の生徒会長が、誰と癒着するのよ」
高らかな笑い声が店内に響いた。
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