終焉の時

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 最初に立ち寄った病院は激しく攻撃されていた。ミサイルが打ち込まれたのか、建物の半分が崩れ落ちている。その後何か所か回り、やっと開いている病院を見つけた。  中に入ると病院全体が殺気立っていた。  外来に入りきれない患者が廊下にまで溢れていた。多くの人は家から出ていないはずだが、やむを得ない事情で外に出なければならない人たちがいるのだろう。  手当をしている医師や看護師の中には包帯を巻いている人もいた。どうやら出勤途中に襲われたらしい。受付に声をかけたが、とにかく待っておくようにと言われ、鷲は一人で冬華を抱きかかえたまま病院の床に座った。斎藤さんには、いつになるか分からないからとお礼を伝えて帰ってもらった。  言い争う声が聞こえて目を向けると、医師同士が激しく言い合っていた。 「患者に敵味方なんてないでしょう。重症患者から診るべきです」 「まずは自国民を助けるのが先だろう。誰の所為で、こんな事態になっていると思ってるんだ」  彼らの傍らには、血だらけの男が蹲っている。 「アレは、暴れていた奴らの一人だ。助けてくれと、仲間が置いていったんだよ。助ける必要なんてあると思うか?」  医師のやりとりを見ていた鷲に、隣にいた男性が言った。彼は一部始終を見ていたようだった。男性は鷲が抱きかかえている冬華を覗き込んだ。彼女の頬は腫れあがって、顔や腕には無数の擦り傷があった。 「なぁ。彼女、怪我をしたのか? 動かないけど大丈夫か? お兄ちゃんも血だらけじゃないか」 「ええ」 「なかなか順番は来ないぞ。俺もずっと待ってるんだ」 「そうですか」  鷲は曖昧に答えて周囲に目を向けた。血だらけの人、額に包帯を巻いている人、腕を吊っている人の姿がある。誰もが俯き、悲愴な目をしていた。
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