ふっかつのじゅもん

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「仮にそうだとしてもさ、試してみる価値はあると思わないか?もし本当なら、死んでも生き返れるんだぞ。ゲームみたいに何度でも」 「なるほど。それもそうだな」  旅行から帰ったらすぐにでも氏神様にお参りしよう、そう肯きあいつつ、俺たちは八坂神社目指して歩き始めた。  母が教えてくれた神社は実家から程近いところにあった。小学生の頃、毎日登下校に使っていた道沿いだ。ナオトも同じ地元なのでその神社のことはよく知っていた。もちろん彼にとってもそこが氏神様だった。  礼もせずに鳥居をくぐり、手水舎の横を通り過ぎ、先へと進む。親友と並んで拝殿の前に立った。 「どうする?」  俺が問うと、お前からやれとナオトが目で訴えた。  大きく深呼吸してから、辻本が言っていた通り、四回お礼をしてから四回拍手を打つ。それから鈴を鳴らした。すると……。 「おお、遠藤ケンジよ。よくぞ無事で戻ってきた。そなたに復活の呪文を教えよう……」  慌てて携帯を手に取り、聞こえてくる言葉をメモしていく。それは古代語のような響きにも聞こえるが、文字に起こすと意味のないひらがなの羅列に見えた。 「そなたの活躍、期待しておるぞ」  それを最後に声は聞こえなくなった。呆然と立ち尽くしていると、ナオトが肘で俺を小突いた。 「おい。どうなったんだよ?」  無言で携帯の画面を見せると、 「え?本当に聞こえたのか?」 「なんだよ。お前には聞こえなかったのか?」 「うん」  どうやらあの声はお参りした者にしか聞こえないようだ。  それからナオトも復活の呪文を聞き、それらを交換した。これでどちらかが不慮の事故に見舞われたとしても、生き返ることができるってわけだ。  それから三日後のことだ。ナオトと二人で電車に乗っていると、突然悲鳴のようなものが聞こえてきた。声がしたのは後方からだ。そちらを振り返ると、血相を変えた乗客がこちらに向けて走ってくる。まるでなにかから逃れようとするように。  通り過ぎる人たちが、のんきに座っている俺たちの車輌に警告を発していく。
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