ふっかつのじゅもん

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「俺にはハルトって可愛い弟がいるのはお前も知ってるよな?」 「ああ」 「あいつバカだから、疑いもせずになんでも俺の言うとおりにするんだよ。まあそこが可愛いんだけどさ。んで、念のために送っておいたんだ。俺の復活の呪文と、もし俺が死んだらすぐにこの神社でそれを唱えろってメッセージを」  なるほど。今回のような場合でなくても、二人同時に命を落とす可能性だってあったわけだ。となると、ここはナオトの機転に救われたのかもしれない。 「ちなみにさ、俺ってどんな死に方をしたんだろ?あの瞬間のことはまったく覚えてないんだよな」 「お前は、包丁で刺されたんだよ。たぶん即死だろうな。その直後俺も参戦したんだけど、あいつ灯油に火をつけやがってさ。怯んだ隙に俺も刺されたよ。たぶん、俺たち含めあの車輌にいた奴らは丸焦げだろうな」 「丸焦げだって?そんな状態で生き返ったら、どうなるんだろ……」 「そこは問題ないんじゃない。お前の友達だって死ぬほどのバイク事故だったんだろ。それなら体の損傷は相当ひどいはずだ。なのに五体満足綺麗な姿をしてたじゃないか」 「言われてみればそうだな」 「だろ?ゲームでもボコボコにされて死んだはずなのに、ぴんぴんした体で生き返るじゃん」  ゲームと現実を一緒にするのもどうかと思ったが、実際に俺たちの身に起きてることは現実離れしているのだから、この際とやかく言うこともないだろう。 「お!」とナオトが声をあげた。彼の視線を追うと、鳥居の外にハルトの姿が見えた。  彼は一礼して鳥居をくぐると、携帯電話を見つめながらこちらに歩いてくる。ところがあと少しで拝殿と言うところで何かを思い出したかのように急に足を止め、後戻りを始めた。どうやら手水舎に向かうようだ。 「偉いね。ちゃんと手を洗うんだ」 「あいつ、バカの上にクソ真面目だからな」  ハルトは小脇に携帯電話を挟むと、手洗い場のひしゃくを右手で取った。それで水をすくい、左手を洗おうとしたそのときだ。  脇に緩んで挟んであった携帯電話がするりと滑り落ちて、ポチャリと水の中に沈んだ。 「え?」 「あ!」  俺たち二人が同時に声をあげる。  すぐに拾えばいいものを、ハルトはしばらく右往左往し、それからやっとひしゃくですくい上げようとした。ところがうまくいかないものだから、最後には腕まくりをして水の中に手を突っ込んだ。
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