10.悪魔の取引と瀕死の白鳥

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10.悪魔の取引と瀕死の白鳥

まずい。このままじゃ滉一さんが花織ちゃんに襲われちゃう! そう思って見ていたけど花織ちゃんの様子がおかしい。 ーーー何してるんだ? 滉一さんが眠ったのを確認した花織ちゃんは、ドアや窓にガムテープで目張りを始めた。 「え?何してるのこの子??」 「ククク、おかしな女だろう」 ん?待ってこれってまさか…… 花織ちゃんはキッチンの方へ歩いて行き鏡から姿を消した。 「ちょっと!ロットバルト。これ無理心中しようとしてるんじゃないの!?」 「アハハハハ!傑作だろう?この女は王子様への愛に狂って思い詰めた末、お前を殺しかけた。しかしお前を排除してもこの男が手に入らないと知り一緒に死ぬことにしたんだ。日記につらつらと書き綴っていたよ。ははは!」 おーーーい!待て待て、笑ってる場合じゃないって!ガス自殺だこれ! 「滉一さん!寝てちゃダメだ!起きて!起きてよ!」 僕は鏡に向かって叫んだが勿論こちらの声は向こうに聞こえない。 どうしたらいいんだよ……!? このままじゃ花織ちゃんと一緒に滉一さんが死んじゃう! 「助けてよロットバルト!このままじゃ……」 「王子様は死んでしまうな。だが安心しろ。今眠っているからこのまま死ぬまでの間に王子様はここに来る事ができる。すぐに交わりさえすればお前は助かるさ」 「え?なんだって?」 そうか、眠ったから滉一さんはこっちに来るんだ! 「そしたらなんとかこっちで説得して向こうで目覚めるようにできないかな?」 「それは無理だよ可愛いオデット」 ロットバルトは片頬を歪めて笑いながら僕の髪の毛を撫でた。 「え!なんで?」 「あの王子様はどうしても死ぬ運命なんだろうな」 「そんな……そんなのダメだよ……なんとかしてよロットバルト!なんでもするからお願い!」 僕がロットバルトの手を掴んで懇願すると彼は真顔で聞き返した。 「ほう?何でもするだって?」 「どうせあんたならなんとかできるんでしょ!?」 「できるな。しかしタダというわけにはいかない」 悪魔は意地悪く笑った。 そう来ると思った。でも、どうせ僕はほとんど死んでる身だから滉一さんを助けられるならなんだってしてやる。 「どうしたらいいの?」 「王子を助ける代わりにお前が私のものになるのだ。永遠にな」 「それは……」 予想通りといえば予想通りだ。 そもそも最初からこれがロットバルトの目的だったのだろうか。 「そうすれば、お前が王子様と身も心も結ばれて受け取るはずだった命を王子様に渡せるようにしてやろう」 「……わかった。それでいい」 彼は目を見開いてちょっと驚いたような顔をした。 「ほう。本当に良いのか?お前は死ぬということだぞ」 「良いよ別に。僕の人生なんてどうせ……姉のスペアから始まってただのしがないバレエ講師。滉一さんが生き残って踊り続けてくれればそれでいい。僕の命で滉一さんが助かるならそうして欲しい」 「ククク、よく言った。お前の願いはしかと聞き届けたぞ。ではこちらへ来い」 怪しく笑う悪魔に従って寝室に連れて行かれた。 「間もなく王子が湖にやって来る。その前にお前の淫紋に細工をしてやろう」 「わかった、早くして」 「では、私の精液を飲め」 「はぁ?」 「飲めばお前の命と引き換えに王子様を助けられる。さっさと舐めて勃たせて射精まで導け」 ロットバルトが性器を取り出した。 「時間がないぞ」 促されて僕はベッドに腰掛けたロットバルトの足元に跪く。 おずおずと陰茎に舌を這わせた。悪魔が僕の髪を梳きながら嘆息する。 「青白い顔をして……まるで瀕死の白鳥だな。実に……美しい」 僕は何も考えないようにして必死で舌を使った。 こんなことするのは初めてだと思ったけど、やっているうちに以前にもやったことがある気がしてきた。 そうだ、僕はいつも滉一さんのものをこうやって口に含んで愛撫していた。 「ん…ふ…ぅ」 「苦しいか?ふふふ、もっと舌を使え。そう……そうだ。いいぞ、上手だ」 早く、早く……!早く出してくれ…… 僕は無我夢中で悪魔の性器を舐めた。 「はぁ……さすがだな。男を惑わせる淫らな顔だ……やっと私のものになる」 ロットバルトが自ら腰を使って僕の口を犯し始めた。喉に先端部が突き刺さりえずきそうになる。 苦しい……でもこれで滉一さんが助かるんだ。 「出すぞ、こぼさずに飲め」 口中で陰茎がドクドクと脈打ち、勢いよく温かいものが流れ込んできた。 僕は吐き気をこらえながらこぼさないように注意してそれを嚥下した。 「最後まで吸い取れよ」 言われたとおりに吸い付いて、最後の最後まで飲み干した。 「はぁ……はぁ、はぁ……ゲホ、ごほ……」 「よし。それでいい」 口の中が青臭くて最悪だ。 喉を通って精液が体内に入ると、ジワッと身体が熱くなってきた。 「なにこれ……?どうなってるの?からだが熱い……」 「少し我慢しろ」 「内臓が焼けるみたいだよ……なにこれ?助けて!熱い……熱い!」 僕はあまりの熱さに床をのたうち回った。 それが収まって汗だくで浅い呼吸を繰り返していたら悪魔が僕を仰向けにひっくり返した。 そして半ズボンを下ろして下腹部を見た。 先程まで淫紋はピンクから黒に変わっている途中だったが、今は全て黒に変わっていた。 「これは…?」 「私の精液が身体中に行き渡り、お前が私の力を一部引き継いだ証拠だ。これで王子とセックスすれば、お前の呪いが解ける代わりに王子様の命を助けることができる」 僕は淫紋を撫でた。これで滉一さんが助かる。 先程の異様な苦しみに耐えたせいなのか、僕は過去の記憶を取り戻していた。 滉一さんへの気持ちも、何もかも全て思い出した。 しかし思い出したところで滉一さんとももうお別れだ。 「さあ、行け。せいぜい最後の逢瀬を楽しむことだな、可愛いオデットよ。いや…もうオディールと呼んだほうが良いかな?」 ロットバルトのマントに包まれ、僕は湖に戻った。
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