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5.悪魔の誘惑
翌日、また白鳥に戻った僕はお腹を空かせながら湖を漂っていた。
ーーーはぁ、お腹すいたよ……今夜滉一さん何か持って来てくれますように。
すると突然また頭上が暗くなったので上を見たら悪魔ロットバルトが空から降って来た。
“うわぁああっ!”
クェーーー!!
そのまま僕はマントに包まれ連れ去られた。
気付くとまたロットバルトの部屋にいて、僕は人間の姿に戻っていた。
「もうちょっと穏やかな連れ去り方ってもんがあるでしょ……」
「文句を言うな」
「うわっ、また背後から急に話しかけないでよ!」
「お前、腹が減ってるだろう。こっちへ来い」
え……?
連れて行かれたのはダイニングルームで、たくさんの料理が用意されていた。
「うわー!これ食べてもいいの!?」
「いいぞ」
「いただきます!」
僕は夢中で食べた。この世界に来て初めての食事だった。味も美味しい。
好きなだけ食べて満足したので手を合わせた。
「美味しかったぁ、ご馳走様でした」
「ふん、腹が減ってた割に少食だな」
なんとなく習慣で、決まった量しか食べなくなっていた。余計なものを食べて後から減量する方が大変だからかな。
「それじゃあいつまで経っても細いままだぞ、なんだこの腰は。これでも男か?」
悪魔が後ろから両手で僕の腰を掴んだ。
未だに女性ダンサーの代わりにリハーサルに借り出されることもある身だ。
「骨格が悪いんだよ。鍛えても筋肉が付きにくいし身体がペラペラなままなんだ」
身長も高校の時170cmで止まってから伸びてない。海外の女性ダンサーはもとより、最近の発育良い国内の女の子でももっと大きい子がいたりする。これでポワントを履かれたらもう女性の方が大きいということになる。男性ダンサーとしては身長も筋肉量も足りなすぎてそれこそ村人くらいしかやれる役がないのだ。
「太らせて食べてやろうと思ったのに。ククク」
「うわ、悪魔が言うと洒落にならないからやめてよ……」
「いや、本気かもしれないぞ。私はお前が気に入った。王子と愛し合うのなんて諦めて私の物になればいい。存分に可愛がってやるぞ」
は……?
腰から手を滑らせてそのまま胴体を撫でられる。
「ちょっと、いやらしい触り方しないで。離してよ」
「満更でもないだろう?お前はやはり男が好きなんだ」
「そんなわけないだろ。ちょっ、やだって!」
乳首をシャツの上から摘まれて身体がビクッと跳ねた。
「あっ!」
「可愛い声を出すじゃないか。ほら気持ちいいんだろう?」
悪魔の手が僕の下半身に伸び、半ズボンを少しだけ下ろした。
「私とベッドを共にすればこの淫紋がすぐに真っ黒くなってお前は私の物だ。どうだ?王子なんてやめて私と仲良くしようじゃないか」
「や……いや、ダメ……あっ」
半ズボンのウエストから手を差し込まれ淫紋の部分をスリスリと触られる。
乳首を弄られながら際どい部分を撫でられてアソコが反応しかけていた。
悪魔は僕の頬を舐めながら少し興奮した様子で言う。
「いい顔だ……なんであんなに魂レベルが低いんだお前は?こんなに淫らで美しいのに」
「知らない……ん……」
淫紋を撫でていた手が下に降りて性器を握られた。
「ひっ!」
思いのほか繊細な動きで扱かれてもどかしい。
もっと強くして欲しい……
「どうする?最後までやっていいのか?抵抗しないならこのまま私の物にするぞ」
「だ、ダメ……ダメだよ!ダメに決まってるだろ!」
僕は力を振り絞って悪魔の手を逃れた。乱れた服をきちんと元に戻す。
あー、あぶない。さすが悪魔、気持ちよくさせるのが上手いな。
「揶揄うのはよしてよ。まったく……」
「せっかくだから邪魔して盛り上げてやろうかと思ってな」
「邪魔しないで。大体、ジークフリート王子なんて言ってだけど僕の知り合いじゃないか」
「驚いたか?面白いだろう」
「知り合いとセッ……ゴホン、とか本当に悪趣味なことさせるよね」
「私は面白ければなんでも良いのさ」
一瞬だけ、このまま気持ち良くなってロットバルトのものになってもいいかもなんて思ってしまった。
あーもう、この悪魔め……油断も隙もない。
「ねえ、滉一さんは何でここに現れたの?あの人は死んでないんだよね?」
「ああ。あいつは生きてるよ。眠ってる間だけ、あいつの夢とこの世界が繋がってこっちに来られるようになっている」
「ああ、なるほど。じゃあ滉一さんは夢だと思ってるわけね」
「そうなるな」
「じゃあ別にこっちで何が起きても夢ってことで片付けられるのか……」
「まあな。だが魂はこっちに来てるから肉体が交わった感覚はリアルに記憶される。安心しろ」
なにも安心できないってば……
ほんとふざけたゲームだな。
「食べ物は助かったよ、ありがとうごちそうさま。もうすぐ夜になるから行くよ」
「気が変わったらいつでも抱いてやるぞ。可愛いオデットちゃん」
またロットバルトのマントに包まれ、僕は湖に戻された。
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