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芸能界ではすっかり大御所のあの男。最近ではワイドショーの司会になった。おかげさまで調子に乗って、ちょっとしたインテリ気取りだ。
だがその実、裏ではものすごく手癖が悪い。昼は社会派を装っておいて、夜は社会の窓が開きっぱなし。局アナ、女優、若手芸人の彼女。もちろん私も、私の同業者も――数えきれないほど食われてしまった。
そんな男と知っていても、頭を下げなきゃ生きていけない。芸能界も残酷だ。
私の仕事には旬がある。それが過ぎれば引退だ。仕事があるうちが華。稼げるうちに稼ぐ。
営業して、媚びて、時には枕も。そうやって、この業界を生きてきた。今までそうするしかなかった。これからもそうするしかないのだろう。
人間としての尊厳を切り売りして、ボロボロになって、どうしようもなくなった時――私は、この店でカツ丼を食べる。
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