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今日もいつもと変わらない朝を迎えた。真っ暗な牢屋で目を覚ました、はずだった。
なのに……さっきから、どうも視界が悪い。目が眩しくてしょうがないのだ。
少女がいつものように昼食を持ってきた。俺は普段と同じようにそれに手を付けようとした。
その瞬間、ダイアモンドと目があってしまう。
少女が食事を運んできた鉄の食器に、自分の顔が映る。宝石のようにキラキラと光る目玉がこちらを見ていた。
───きもちわるい
フォークを逆手に握りしめて、衝動のままに先端を自分の目に向ける。
こんな目を持っていたってアイツらを喜ばせるだけだ。
このまま自由を奪われたままどこぞの眼球コレクターに売り飛ばされて、そして、一生この目に縛られた人生を送っていくだけなのだ。
ならばこんなもの……抉ってしまえばいい。
フォークを握って、ぜえぜえと息を切らしながら恐怖と怒りの狭間で攻防していると、再びあの少女の声が聞こえた。
「っ、ダメ!」
右腕が引っ張られて、ガシャンと金属が床に叩きつけられる音が響いた。
反射的に女の手を振り払う。勢い付いて相手を突き飛ばしてしまったが、少女は果敢にも再び俺に手を伸ばしてきた。
「そんなことをしないで。自分を傷つけてはいけないわ」
動きを封じるように、空を彷徨う俺の両手を少女の手が握ってくる。
「うるせえ!!こんな、こんな気味悪い色の眼のせいで、俺は…、俺はここから出られねえんだ!」
「落ち着いて。あなたの瞳はとてもきれいだわ、どうしてそんなに自分を卑下するの」
きれい、という言葉をこいつは褒め言葉として使っているんだろう。本当に、何にも知らないガキだ。
その言葉がどれだけ皮肉に聞こえるか、お前にはわかんないんだろうな。
「……ああ、そうだったな。お前はなんにも知らないガキだ。こんなガキに喚いたところで、無駄だったわけだな」
世間知らずのガキめ。これだから嫌いなんだ。
ハハ、と乾いた笑いが空虚な部屋に響いた。
しばらくして、少女が部屋を出ていく気配を感じた。
子供のように膝を抱え込んで顔を伏せる。俺がこんな調子だから、きっと食事を片付けに行ったんだろう。
彼女は再びここに戻ってくるだろうか。
戻ってきてほしいわけではないが、今回は流石にやりすぎた気がする。なんだかきまりが悪くて、八つ当たりで近くに転がっていた石ころを投げた。
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