虹色の被検体

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どれくらい時間が経っただろうか。いつの間にか眠っていたらしく、ふと瞼を上げる。なんだか外が騒がしい。 先程よりも冷静な脳みそを必死に動かす。 研究所内もバタバタしてる空気を感じるが、騒ぎの根本は研究所の外だろうか。なんとなく、遠くの方で喧騒が聞こえる。 眠い目を擦って現状把握に努めていると───突然のことだった。 何かが爆発する音とともに、がらがらと何かが崩れるのが聞こえた。 もしかして、建物が崩れているのだろうか。 男と女の悲鳴が聞こえて、現状のやばさを次第に理解してくる。 何が起きているんだと立ち上がって格子の方に駆け出すと、手足の枷に引っ張られてよろけた。 くそ、今は大人しく拘束されている場合じゃないのに。 腕を引っ張ると繋がれた鎖がこすれる。歯ぎしりしていると、急に目の前が真っ白になった。 今度は近い場所で、ドンと何かが爆発した音が聞こえた。眩しさに目を手で覆った時、手足が軽くなっていくことに気づく。 白い光が消えた後に、さっきまで自分が座り込んでいた場所に目を向ける。 壁はぐしゃぐしゃに崩れて瓦礫があちこちに転がり落ちていて、俺を繋げていた鎖は途中で壊れていた。からから、と石が転がる音がまばらに聞こえる。 崩れた壁の向こうには、この数カ月間ずっと待ち焦がれていた外の世界が広がっていた。 部屋の跡形も無いその光景に呆然していると、遠くから研究員の声が聞こえた。 「敵国からの奇襲だ、早く逃げろ!」 ああ、なるほど。敵国の軍から爆弾が落とされているのか。 ……早く逃げないとやばいじゃねえか!! 崩れた壁の向こう側が目に入る。このまま足を動かせば、出られる。 あんなに待ち焦がれてた自由が、すぐそこにある。 このまま逃げてしまえばいいと、久しぶりの太陽の光を浴びながら考えた。 というのに俺の足は、研究所の廊下を走っていた。しばらくまともに体を動かしてなかったせいで体がうまく動かず、よろけながら駆けて行く。 あいつは、あいつはどこにいる? 一人で俺の世話をしながら笑っていた、寂しい少女。あの小さい背中を探して駆け回っていると、料理部屋のような場所でその少女を発見した。 「あら、一人でここまで来れたの?」 そいつはいつものように落ち着いた佇まいで、キッチンの方でガチャガチャ音を立てながら作業をしていた。 小さい体なのに、まるで母親のような後ろ姿だ。 キッチンに立っているのは珍しいが、そんなことはどうでもいい。
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